ジュエリーの起源を紐解けば、太古の昔より守護やおまじないなど、自然界に宿るチカラの源を感じることや祈りを捧げるアイテムとしての意味合いがあったはずと考えます。
もちろんおしゃれの道具として身を飾るもの、記念日やお祝いなど思い出の品としてと言う一面が現在では主流ですが、他人に見せることの無いジュエリーと言うものも確実に存在します。
今回はそのようなご自身にとって大切な意味合いを持つジュエリーのリフォーム製作をお手伝いさせていただいたので、お客様のご了承の上でこちらにてご紹介をさせていただきます。
十数年前に、当店にてブライダルジュエリーをご用命賜わりましたご夫妻様、その後すぐにご主人様から結婚指輪を下げるためのネックレスも続けてご購入いただきました。
このたび久方ぶりにご夫妻でご来店いただき、リフォームの相談をしたいと持参されたお品がこちらの亡き父上様形見のプラチナ製ダイヤモンド指輪でした。
昭和の時代には、よくご年配の男性がお着けになられているのを見かけた、通称『印台』と呼ばれる男もの指輪でした。
昨年2020年の春先から突如降りかかって参りました新型コロナウィルス禍、ほぼ全ての皆様が大なり小なりに日々の生活やお仕事に多大な影響を受けていることと思います。
今回ご来店のお客様も私ども同様に接客を伴うお仕事のため、いろいろな行動制限や、業務内容の変更など、取り巻く外部環境の突然の変化の波に翻弄され、これからの数年はなかなか見通しがきかない状況と感じられていらっしゃいました。
そのようなタイミングで、お父上が亡くなられてから数年間そのままにされていた形見の指輪ですが、ふとこちらの指輪をリメイクできないものかと今回お考えが浮かばれたそうで、横浜yamatoへ3度目のご来店を賜りました。
現状デザインでは、とてもこのまま着ける勇気がないと言うことで、当店にてご結婚指輪をお買い求めいただいてから以降の十数年間のお話なども合わせて詳しく伺い、費用対効果を一番に優先したペンダントネックレスへのリフォームをご提案させていただきました。
指輪の腕と呼ばれる輪部分と、ダイヤモンドが入る印台部分を切り離し、さらに少しばかり手を加え形を整え、なるべく元の形をそのまま残したペンダントにリフォーム提案しました。
本来ならば、当店にてお買い求めのお持ちである上画像のネックレスチェーンを使うべきなのですが、ペンダントサイズとのバランスを考え、ネックレスチェーンも新たに新調させる方向でお勧めをいたしました。
ご相談を承った後はご主人様と何度か直接画像の送受信を繰り返し、最終的には全てお任せしますとの快諾をいただき、早速ペンダントへの改作に着手、出来上がり後に再び受け取りにお越しいただきました。
結果的には、お父上のプラチナ印台指輪が重量級であったこともあり、下取り相殺後のご請求残額はほぼほぼ当初のご希望予算に近いところで収まり、新たなダイヤモンド・ペンダントネックレスが完成いたしました。
父と息子・ ・ ・
私も同じように、生前にもっと父と素直にいろいろなことをたくさん話しておけばよかった…と、ふと思うことがございます。
今回のお客様にもさまざまなお話を伺うなかで、勝手ではありますが、わたくしととても似たような想いであることを感じました。
生前にお父上が着けられていた印台指輪の一部分をそのまま残し、これからはご自身が父上のダイヤモンドを常に肌身に着けながら、これからも毎日公私にわたって益々のご活躍を陰ながら祈念しつつ、リフォームした新たなペンダントネックレスをお納めさせていただきました。