先のゴールデンウィーク中に1本のお電話がありました、その内容は「遺品のなかにジュエリーらしきものが数点あり、これらを見てもらい相談をお願いすることはできますか？」というお問い合わせでした
過去にも何度も似たようなご要望にお応えしているので、ご都合が良い日時にいらしてくださいと即答し、すぐに当日お客様がご来店になられました
ご来店のお客様は最近鬼籍にはいられたお母様の遺品の数々を持参され、早速に1点づつ拝見しながらジュエリーと呼ばれる貴金属類と、アクセサリーと呼ばれる装身具とにまずは区分けをさせていただき、各品々の詳細をご説明するとともに、お客様やご親族の方に思い出深い品は含まれていないかなどを逆にお尋ねしつつ判別をさせていただきました
なかでも素人目には判断が難しいイミテーションパール（アクセサリーの模造真珠）のネックレスは、ケースバイケースでご使用が充分可能と判断し、特に黒真珠タイプのものはこのままで積極的にご着用をお勧めさせていただきました
それら遺品のなかにお母様が長年お着けになられた様子の金指輪が2本あり、サイズ12番の甲丸指輪には750刻印と大蔵省検定印の日の丸マークがあることをまずはお伝え、もう１本はサイズ9番の平打ち指輪でしたが金性刻印が見当たらず…という状況でした
お客様自身はこれらの指輪はデザイン的にも自分が着けることは無いかな…というお答えで、買い取り屋さんに処分をお願いすることも視野に入れていると伺いました
ジュエリー専門店を営むわたくしどもは、処分をする前にまずは活用することや、いつでもすぐに処分は可能なため本当に処分してしまってよいのかを最終確認する役目も勝手に担っており、こちらの金指輪も再度じっくりと拝見させていただきました
金性刻印が見当たらない平打ち指輪も長年お着けになったままのご様子で指輪内側もだいぶ変色しておりましたが、一部分に文字が刻まれていることに気がつき、その刻まれているアルファベット文字をルーペで拡大しながらメモに書き写してみると、『C H I B A G I N 73 5 』
なんの意味でしょうかね〜？とお客様へご説明をした途端に、「本当ですかー！」とのお言葉と共にお客様のお顔の表情が変わりました
お客様曰くお父様がちばぎん、すなわち千葉銀行に長年お勤めだったそうで、お母様形見の指輪にちばぎんの文字が彫られていたことをすぐさまお兄様にも連絡され始めました
この文字が現れたことから事態は急変、当初は予想していなかった金指輪2本をメインにしたリフォームを検討いただき、お客様がこれから日常使えそうなリフォーム案を2本それぞれにご提案、また複数本あったネックレスのなかからあこや真珠ネックレスとお見受けしたお品は糸替えメンテナンスを承り、当店にて全珠磨き上げの上糸替え作業をいたしました
数日後にお受け取りに再来店されたお客様から、「1973年は父が千葉銀行へ勤務して丁度20年目の年で、遺品の品々が千葉そごうロゴネーム入りケースに仕舞われてあったので、恐らく永年勤続表彰かなにかで千葉そごう商品から金指輪を選び母に贈ったのではないか…と推測しました」というお話しを伺いました
まず平打ち指輪はサイズ直しをし、指輪の厚みから石留めが難しいため３つのポイントにメレダイヤモンドをあしらい、ロジウムメッキをかけ白色に仕上げ、将来は金色に戻すも、再度白色にメッキ仕上げするのもありといたしました
もう一方の甲丸金指輪は同じくサイズ直しのあと、メレダイヤモンドを斜め一列にセッティングし華やかさを加え、指輪内側にはご両親様のイニシャルを文字入加工しました
私共もいままでに数々の方々から遺品相談を承っておりますが、勤務先の企業名を文字彫りされていたジュエリーは初めてのケースでしたので、お客様へ是非当店のWEBサイト内ジュエリーリフォームページへのご紹介を打診し快諾いただき、こちらのページにてご紹介をさせていただきます
お父様お母様と直接お目にかかる機会はありませんでしたが、今回拝見させていただきましたご遺品のジュエリーから、お父様がご実直にお仕事に向きあいご家庭を築かれていらしたことに敬意を表しながら、奇しくも指輪に彫られた73年5月から50年目となる2023年の今月、横浜YAMATOがジュエリーリフォームを承らせていただきました
ご家族の思い出や、大切な記憶が宿るジュエリーを、専門店としての的確なメンテナンスやリメイク案をご提案し、ご一緒に考えながらお手伝いをさせていただきます
