いよいよ4月、そして今日4月1日は子供時代にはエイプリル・フールだといって、まわりの人たちに他愛のない嘘をつき楽しんでいたような記憶があります
これからご紹介するお話は、ご本人様にとっては嘘であってほしいというような現実のお話で、まさしく「えぇ!嘘でしょう・・・」と叫びたくなるようなジュエリーのSOSの事例です
まず最初は横須賀市より、初めて当店にお越しになられた男性のお客様のお話です
結婚してから数十年、普段ご愛用のマリッジリングを奥さまがどのような理由か存じ上げませんが、車庫でコロコロと落としてしまったことに気がつかず、指輪が無い!と家中探し回ったところが運よく車庫で発見!、しかし 『えぇ!嘘でしょう~!!!』 (当店の勝手な脚色ですが)
・・・そうなんです、指輪に気がつかないうちに車の出入りが!
わたくしも30年弱この仕事をしておりますが、初めて見るレベルの指輪の変形
でもお越しいただいた心優しいご主人さまが「新しい指輪を購入すればいいんですが、なんとか直してやりたいんです!」、お話を伺っているうちにすでに私の頭の中では直せるだろうか?ということと、費用はいくらぐらいいただくことになるだろうか・・・と考え始めておりました
通常なら私共も他のお店さんと同じように、『この際、新しいものをご購入検討されたら、いかがでしょうか・・・』というレベルのSOSなのですが、ひょっとしたらご主人さまもご自分が運転する車で轢いてしまったのでは・・・とお考えなのではなんていうことを感じておりました
そのようなご主人さまの「なんとか思い出の指輪だから新しい指輪を購入するにしても、可能な範囲で少しでも元に戻して欲しいんです」というお声に背中を押され、「とりあえず、やってみましょう!」とお請けさせていただきました
もちろん私が直接作業をするわけでなく、依頼をする職人さんへこの仕事の意味を今度はご主人さまになり代わって訴えなければなりません
当店の高額品を製作しております一番手の職人さんに「出番ですよ!」とこの指輪をまず見せたところ、やはり同じように「えぇ!嘘でしょう・・・」と驚き、「これは無理でしょう!・・・」なんて最初は言っておりましたが、誰でもできる仕事でないところに意味がある・・・なんて格好いいことを無責任に言い放ち職人魂に火を焚きつけて、「では出来るとこまでとりあえずやってみましょう・・・」となりました
他のお客様の分の加工打ち合わせの度に、「指輪の間から小石が出てきましたよ・・・」とか、丸く型直し始めましたが6か所地金が断裂してます・・」とか、最後には「リング内側に何か石留めしてあったみたいですけど石外れて紛失しているようです・・・」刻一刻と状況が伝わってまいりました
もちろんご主人さまにも状況をお伝えし、途中で一度ペアでご購入のご自身のマリッジリングをお持込みいただき、内側にブルーサファイアが入っていたことを確認いたしました
それから3週間後、拝見しましたご主人のマリッジリングもピカピカに輝く新品同様の姿に戻り、そして奥さまのあのペチャンコになってしまったマリッジリングも違った意味で 『ええぇ!!!嘘でしょう~』 という驚きの輝きを取り戻させていただきました
《ペチャンコの姿が信じられないぐらいまで復元されたマリッジリング、内側にはご主人さまのサファイアにサイズと色合わせいたしました新しいブルーサファイアが留められました》
数十年のたくさんのお想いがこもりピカピカに戻ったマリッジリングをお持ち帰りになられるご主人さまへ、今日からまた気分新たに新婚時代だと思ってお着けになられてくださいね・・・とお見送りさせていただきました
さて次にご紹介させていただくお話も、これまた『えぇ嘘でしょう~』というぐらいに白濁した真珠ネックレスをお持ちになられたお客様のお話です
《画像では判りにくいかもしれませんが、持ち込まれました著しく輝きを失ってしまった形見の真珠ネックレス》
とにかく失礼な表現ですがボロボロといってもよいぐらいの肌荒れ状態で持ち込まれた真珠ネックレスを拝見し、ご存知のように有機物であり、通常は最低0.4ミリ~0,6ミリぐらいの厚さ(当店がこだわる厚巻きと呼べるレベル)ほどしか真珠層がないので、薄巻き真珠であったり、奥の層まで痛んでいると挽回は難しいので自信が全く無かったのですが、このお品もお持込みになれたご婦人の今は亡き母上さまの形見の真珠ネックレスとのことで、「出来る限りキレイにできないでしょうか・・・」というご依頼になんとか当店としてもお手伝いできればとの思い出で、どうして大切な形見の真珠ネックレスがこんな状態になってしまったのか?詳しい事情はお聞きしませんでしたが、あまり期待をさせてしまっても申し訳ないので正直な気持ちで、とりあえずダメ元でやってみましょう・・・ということで専門機関に託すことをお約束いたしました
真珠の専門機関でも現状把握のために事前診断から手を付けていただき、汚れや表面的な原因を真珠をキズつけないように細心の注意を払って除去し、たんぱく質を“なめす”というのでしょうか・・・真珠の主成分であるたんぱく質を補強していただきました
数週間後当店に専門機関より真珠ネックレスが到着し、恐る恐る梱包を開封してみると、「えぇ!嘘でしょう・・・」と叫ぶほどテリが戻ったネックレスが目に入りました
《同じ条件で撮影出来なかったので比較が一概には難しいですが、肉眼でも一目で輝きが戻ったことが確認出来るぐらいに復元され戻ってきた形見の真珠ネックレス》
早速お客様にご連絡を申し上げお越しいただき、戻ってまいりました形見の真珠をご覧になられた瞬間、不安そうなお顔が一瞬で嬉しそうなお顔に変わりました
安堵する結果となりましたので、なぜ大事な真珠ネックレスがあのような状態になってしまったのかをお尋ねすると、パーティーにお着けになられて御帰宅後、少しお酒を召し上がっていたこともあって真珠ネックレスをお着けになられたままうっかりお風呂へ入ってしまい、あわてて外して浴槽の上の棚に置こうとしたところが浴室の壁と浴槽のわずかなすき間にスルスルと落ちてしまい、下からも届かず、お水を上から流しても出てこないままに数カ月放置した状態になってしまい、つい最近偶然手の届くところまでネックレスが顔を出したので、慌てて引き出して当店に駆け込んだとのことでした
今回は偶然にも沢山のプロの方の力の結集でハッピーエンドとなりましたが、こんな嬉しい『えぇ!嘘でしょう~!!』なら、エイプリル・フールでなくても大歓迎です