いまから30年前にご結婚が決まったご夫妻が、ご主人様の親しい方の伝手により卸屋さんを紹介され、婚約指輪購入の為にお二人でその卸屋さんのもとを訪ねられたそうです
いろいろと見せていただいた指輪の中から、最終的にお選びになられたのが立派な南洋真珠の指輪
奥様は想像していた婚約指輪とはちょっとイメージが違っていたようですが、いただく側という立場でもあり、そのまま話しが進んでこちらがご夫妻の婚約指輪となりました
話が変わって…いまから10年前のある日、ご主人様が結婚20周年の記念日ジュエリーを探しに横浜駅へお越しになられ偶然見つけた当店へ入店、以来ご縁が生まれ、お嬢さんへの成人祝いのジュエリーなどご家族の節目節目でご利用をいただいておりました
そんなお付き合いのなかで、今回お話を伺った南洋真珠の指輪が、実はご夫妻の婚約指輪だということを教えていただき、奥様的には『どこに着けていけば良いのかわからない…』とほとんど使っていないこともお聞きしましたので、こちらからリフォームのご提案をさせていただきました
とりあえずは元の姿に戻ることも可能な範囲で、指輪の台座から南洋真珠を外すところまでを承り、真珠自体に経年劣化を防ぐためのメンテナンスのみ手配をし、メンテナンス出来上がり時にリフォームの具体的な案をご提示することにいたしました
メンテナンス完了後ご夫妻でお越しになられ、シンプルでありマーキースカットのダイヤモンドが上品に効いているデザインにて、普段使いのご要望と真珠自体の色目を考慮して18金イエローゴールドのチェーン長さ調整可能なペンダントネックレスにリフォームを即決いただきました
そして一番の難問が残された指輪の台座部分でした…
しっかりと金地金がついている台座ですので、下取り換金相殺も充分に可能性がありましたが、なんとなく婚約時からご夫妻と共に歩んできた時間と、今となってはよき思い出とも言える婚約時のエピソードなど、そしてわたくしが一番に感じていたのはご主人様の想い… それらを勘案して安易に処分するのでなく、なんとか費用のご負担を抑えつつ、この台座を活かしたリフォーム案でした
もちろん最終的に奥様がお着けにならないようですと無駄な費用をかける結果に至るため、こちらのリフォームは一度止め、次回改めて承る方向で台座をお持ち帰りいただきました
年が変わり新年2019年、再び奥様がお嬢さんを伴ってご来店され、昨年まで着ける勇気がなかった指輪台座の換金処分をやめて、やはりリフォームする方向で考えよう…と考えが変わりましたというお申し入れをいただきました
台座にセッティングされている真っ赤なルビーが主張するデザインなので、色合いが喧嘩せず更には負けない取り合わせとしてアメシストの大振りなカボションカットを爪留めせずにふせこみセッティングしたリフォームを施しました
ご夫妻で山登りがご趣味と伺ったスポーティで凛とした奥様へ、日常使いでカジュアルでありながら、ちょっぴり重厚感が漂う可愛らしさを含んだ指輪をお納めさせていただきました
30年間出番を待ち続けていたルビー入の南洋真珠のご婚約指輪が、いまペンダントネックレスに… またカジュアルな指輪に… と新たなデザインとして生まれ変わって、これまでの時間を取り戻すべく奥様にご愛用いただけるジュエリーになりました
50年後の未来には、30年前にご主人様が贈られた婚約指輪を起源とする2つのジュエリーが、娘さんにあたる姉妹のお二人に譲られているのかなぁ…と勝手に想像をしつつ今回の一連のご相談を承り完納させていただきました